映画ウォーム・ボディーズのあらすじと感想ゾンビと人間の恋模様
公開日:2013年
あらすじ
人間がゾンビ化し、時には更に悪化したガイコツとなって生き残った人間を襲い食べるようになった世界。
ゾンビの青年Rは仲間たちと人間グループを襲撃している最中、その一人、少女のジュリーに心惹かれてしまう。
他のゾンビに食べられないようジュリーをゾンビたちに紛れ込ませて居住地である空港へと共に行き、自分の住んでいる飛行機へと匿うR。
最初はRをただのゾンビとしてしか見ておらず、恐怖や嫌悪を感じてさえいたジュリーだが、つたないながらも一生懸命なRの言葉や、その優しさに次第に心を開いていく。
ゾンビと人間の奇妙な同居生活は意外にも様々な楽しみ、喜びをRとジュリー両方に与えるが、時には互いの種族の溝を感じさせる。
やがて他のゾンビを巻き込んで空港を脱出するRとジュリーだが、ゾンビであるが故の悲しい告白とともに二人は別れてしまう。
悲しく帰路につくRだが、彼を追いかけてきた他のゾンビたちに起きた変化、そしてジュリーに危機が迫っていることを知ると、単身で人間の居住地に潜り込み、ジュリーを守り抜く決意をする。
感想
これまで世界にたくさん溢れていた、ゾンビものというジャンルを塗り替える作品。
ゾンビといえば人間の敵、襲い来るゾンビたちをばったばったと薙ぎ倒すアクション作品が多く見られる中で、主人公がゾンビであることがまず新しい。
主人公のRはゾンビであるが、まだ少しだけ理性を残している青年だ。
理性や人間であった頃の感覚を無くしガイコツになった元ゾンビに怯む姿や元の名前を思い出そうとするも頭文字であるRしか思い出せない姿、人間であるジュリーを守るために一生懸命になる姿は視聴者の心を掴むだろう。
そして、そんなRが恋に落ちてしまう少女ジュリーも魅力的な存在と言える。
父親に反発する思春期の娘といえばありがちな存在だが、舞台が終末世界であるだけに切実さが増す。
ゾンビに躊躇わずに銃口を向ける勇ましさと、それでもRと共に生活するにつれて今までの価値観を改める素直さを持ち合わせたヒロインだ。
そんな二人が互いに惹かれあうことで進展していく物語だが、常にどこか暗く汚れている舞台の中で進んでいくことにも注目したい。
全ては終末世界の中の出来事であり、そんな舞台がかえって同居生活の刹那的な楽しさや、二人が惹かれあったことで生まれた微かな希望を強く描き出しているのではないだろうか。
そして、重要なのは物語のクライマックスだ。
ゾンビもののラストといえば人間が見つけた抗体や治療薬によってゾンビが人間に戻るか全滅、あるいは人間たちが新天地で暮らし始めるか全滅という流れが基本で、ゾンビたちが自分で自分を何とかするということはほとんど無かった。
しかし、この物語のゾンビたちはジュリーに恋をすることや恋をする二人の姿に心動かされ
ることで、やがて人間の心を取り戻し自ら人間に戻っていくのだ。
もちろん姿形や人間のころの記憶全てが戻るわけではなく、指がうまく動かないゾンビは傘を開けないしRは相変わらず名前の頭文字しか思い出せない。
しかし、通りかかった人間の女性は傘を開いてやり、ゾンビは傘を持っていない彼女を自分の傘に入れてやるし、RはRのままに生きていくと笑顔で決意する。
ファンタジックな設定や展開が続く作品だが、最後に残るのは自らを受け入れ互いに助け合い生きていくというシンプルなラストだ。
今までのゾンビものは口に合わない方、ゾンビものばかりで食傷気味の方にこそ見てほしい。
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