映画冷たい熱帯魚の感想!園子音作品の傑作

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公開日:2010年
園子温監督作品は最初に『ヒミズ』を見たのですが、この作品を見て間違いだったと痛感しました。
これぞ園子温。これぞ狂気。これぞ「でんでん」。

 

オープニング、ガムを噛みながらレトルト食品や冷凍食品を不機嫌な顔でドンドンかごに突っ込んでいく神楽坂恵。ここがもう抜群にカッコいいんです。マーチングバンドみたいな曲と相まって、もうここ見ただけで100点あげたくなりました。

 

で、もの凄いカット割りのテンポで、レンジに食品が入っていき、チンされて出てくるというのが繰り返されます。この時点で見ている人は「これは何だか知らないが凄そうだ」と思うはずです。

 

自分もそうでした。もう一つ、ご飯すらも炊かないこの奥さん、ボディは最高でも実際に嫁に貰ったら結構困るだろうなという臭いがプンプンしています。園監督、上手いです。

 

その後、食事場面に移りますがここでも不穏な空気が画面から溢れています。マンガを読みながら食事する娘。それを注意もせず黙々とご飯を食べる両親。

 

アップになった時に後ろに映る部屋の壁のリアルな汚さや、冷蔵庫に張ってあるマグネットシールなどが「これは徹底的に人間の汚い部分を見せる映画です」という監督の主張にも見えてきます。

 

食後、娘もヤンキーの彼氏とデートに出掛けたので、色気ムンムンの嫁に迫る主人公、社本信行(演じるのは吹越満)。体よく断られた後、なぜかトイレで嘔吐します。

 

これは長年レトルトや冷凍食品を食べさせられているためだと思われます。この時点での社本の哀れさは後半のための「いい前ふり」になっています。インパクト重視、グロさ重視の映画に思われている方もいるでしょうが、実はなかなか計算されているなと個人的には感じました。

 

スーパーから電話が掛かってきて娘が万引きしたと発覚し、駆け付ける社本夫妻。ここで、でんでん演じる村田幸雄と出会います。

 

この時、怒り狂うスーパーの店長を言葉巧みになだめ自分のペースにもっていきます。これも実に上手い登場シーンです。たどたどしい喋り方なのですが、なぜか憎めないオジサンという感じが良く出ています。



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その後、娘を助けてもらった負い目があるため社本はどんどんと村田のペースに飲まれていきます。彼の乗る赤いフェラーリー、同業者としてみても規模が10倍以上ある熱帯魚店。

 

社本が感じているであろう劣等感が見ている方にも伝わってきます。自分とは冷え切った関係で笑い合うことすらない家族が、村田の話術で楽しそうにしているのを見つめる社本の視線。

 

ラストの社本の狂気が嘘臭くならないのは、この辺を丁寧に描いているからでしょう。
この村田の熱帯魚店「アマゾンゴールド」(割とベタな名前ですが)では、もう一人の重要人物が出てきます。

 

それは黒沢あすか演じる村田愛子。熱帯魚屋に胸元を露わにした女性が2人もいる構図がとても面白いのですが、彼女がこの時点で夫の村田に関して喋っている内容が何気に重要だったりします。

 

「ホント、あの人って身勝手で強引で。お困りになってません?」
こういう風に雑談として社本に話し掛けていますが、これも後々ボディブローのように効いてくる言葉です。

 

「御主人には感謝しています。とってもいい人です」そう言う社本に「いい人? あははは!」と高笑いする愛子。

 

その村田の本性が出るのが開始から30分あたり。吉田さんという熱帯魚の素人にアロワナ関連のビジネスに投資を頼むシーン。

 

雑誌の写真を見せて「これ1匹1000万円!」と熱弁を振う村田に対して「正直、高級魚でも100万ぐらいって聞いてるんですけど」と吉田さんが反論します。
ここからの村田、いや、でんでんの演技が神がかっています。私的には見ていて一番面白かったのがこのシーンです。

 

人懐っこいオジサンから、凶悪な本性が現れる場面。最初見た時は本当に唸ってしましました。
ここも下手な監督なら○○(自主規制)シーンにダイレクトに行くのでしょうが、園監督は社本を一度、商談を行っていた事務所から出します。

 

店内には村田の世話になり働いている娘の美津子。父の呼びかけにも返事すらせず、ピラニアに金魚をエサとして与えています。

 

ここでピラニアが金魚を齧り、赤い血が水槽内にパッと広がる場面があります。
この後に行われる鬼畜的シーンの予告的意味なのですね。

 

この映画、起承転結の「承」であるこの場面のインパクトが強すぎるかもしれません。でんでんが突然口が悪くなるところから、「転」である社本がキレて村田を○○○しまう場面まで、本当にひとっ走りです。

 

いろいろダメな部分もありますが、全てのマイナスは「でんでん」がプラスに塗り替えてしまった気がします。

 

エロ・グロてんこ盛りです。人には薦めにくい作品ではあります。
私はあまりの面白さに、下地になった事件まで調べてしまいました。

間違いなく、私が見た「園作品」でのナンバー1です。



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