映画繕い裁つ人の感想!洋服の価値観が変わる映画

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公開日:2014年

 



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洋服にスポットライトを当てた映画

池辺葵による漫画『繕い裁つ人』(全6巻)が原作の映画。
主演は日本の有名女優の中谷美紀。

 

神戸の街にある既に他界した祖母が営んでいた小さな洋裁店を引き継ぐ女店主・市江と、彼女を取り巻く客たちとの交流を描いた作品です。

 

しかし劇中でもっぱらスポットライトに当たっているのは、人物というよりも彼女ら(彼ら)が身にまとう美しくも繊細な洋服たちです。

 

主人公が作った、買うのに迷うスキを与えないほど上品な洋服が、神戸の有名百貨店の企画担当者である藤井(三浦貴大)の目に留まり、半ばしつこ過ぎるくらい商品のブランド化の話を勧められても市江は全く意に介さない。

 

しまいには「頑固じじいのようだ」とまで言われる始末だが、あくまでも着る人に寄り添ったスタイルに彼女はこだわり続ける。

 

日々、移り変わる流行のファッション。機械の発達により大量生産が主流の現代においては、劇中に出てくる彼女の仕立てた洋服のデザインは少々アンティーク過ぎるように思えました。

 

しかし着る人間の体に寸分の狂いもなく誂えられ、一針一針丁寧にミシンを踏み込んで仕立てられた洋服の何と美しいことか。

 

「夢を見るための洋服を作っているんです。生活感出してたまるもんですか。」
主人公、南市江のその言葉の通りに、普段、大の阪神ファンである主婦から生活に追われてクリーニング店で忙しく働く母親、亡くなった夫の残した庭の土いじりをする老婦人まで。市江の仕立てた洋服を身に纏う彼女たちは貴婦人のように美しく、そこには生活感が欠片も滲んでいない。

 

それは最早、服を超えて、着る人間の生き方、思想を反映した代物となっている。
その仕上がり具合にあれだけしつこくブランド化を推していた藤井もついには諦めてしまうほどです。

 

女子高生登場シーン

特に印象的だったのは劇のはじめの方に出てくる女子高生の少女がかつて母親が着ていたお気に入りのブルーのワンピースを、自分にも似合うよう仕立てて欲しいと注文しに来たエピソードです。

 

母親にはとても似合うワンピースであったが、背が低いことをコンプレックスに持つ少女にとっては、少しばかりスカート丈が長くてあまり似合わない。

 

そのことを自虐的に口にする彼女の思いを裁ち切るようにして、美しい青の色彩のワンピースに容赦なく主人公が鋏を入れて引き裂くシーンは見ていていっそ、スカッとします。



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それからしばらくしてから、藤井が神戸の海沿いの街を歩いていると向かい側からデートなのだろう、あのワンピースを着た少女と恋人が仲良さそうに笑い合いながら歩いて来ます。

 

胸元には可愛らしい波打つフリルがあしらわれ、長かったスカート丈は彼女の膝丈くらいに落ち着き少女のスラリと細い脚をきれいに魅せていました。

 

時を超えて、今度は母から娘にと愛着に溢れた洋服が受け継がれた瞬間である。
「10年、20年おんなじ服と連れそうていけるのが、どんなに幸せな事か」

 

これは作中の人物の言葉ですが、それは既に洋服に対する言葉というようにも、まるで長年連れ添った伴侶にかける言葉のようです。

 

改めて自分のそれまでの洋服に関する価値観を考えさせられる言葉でした。

 

神戸の街並みを楽しめる

また映画の舞台として、神戸を中心とした兵庫県オールロケなだけあって、それら神戸の街並みの様子も見ていて楽しめます。

 

劇中の市江の服を扱う雑貨屋ナイーフや市江の営む洋裁店も実際の兵庫県にある建物を使用しています。
特に神戸に住んでいる人は必ず一度は訪れているであろう、大丸百貨店も劇中に多く映っているので、地元住民にとっては嬉しく思えました。

 

映画に出てくる喫茶店、『サンパウロ』(こちらも実際に存在する喫茶店らしいが)のドームの形をした、たっぷりの生クリームの下に隠されたレアチーズケーキも見ていて、目に毒なくらいにこっくりとしていて大変美味しそうでした。

 

またおまけに中谷美紀が非常に美味しそうに頬張るのだ。
もともと神戸はカフェも充実した街であるため、映画を見た人はロケ地を観光しながら是非に件の喫茶店でチーズケーキを注文したくなること間違いない。

 

主人公を演じた中谷美紀

主人公である南市江のキャラクターの個性もぶれることなくしっかりと描かれており、また儚げながらも芯の強そうな中谷美紀の持つ雰囲気とよくマッチしている。

 

仕立て人なだけあって、彼女の身に着ける洋服もとてもセンスがあって素敵だが、その仕立ての才能とは反対に日常生活を送る能力がないのもまた、愛嬌があって良い。

 

お茶一つ淹れるのにも、家事全般が万能な母親の娘とは思えないくらいに壊滅的で藤井の手を借りなければ満足に淹れることができない。(実際、彼女が紅茶を淹れた時にはカップの半分が茶葉で溢れていた。)

 

昨日夜遅くまで仕事をしていたせいか、昼近くまで眠り込んでいた中谷美紀の寝ぐせのついたぼさぼさの髪とパジャマ姿(それでも美人であるが)もなかなか見ていて新鮮で、一見の価値がある。

 

また服を着る登場人物たちのそれぞれの背景や心情もピックアップした作品。
特に劇中のキーマンとも呼べる藤井の妹(黒木華)のウェディング・ドレスには感動した。
原作を知らない人も、原作のファンも見て楽しめる映画だ。



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