映画シングルスの感想90年代のアメリカの若者を、恋と音楽で描く成長ストーリー
公開日:1992年
あらすじ
1992年公開ですから20年以上も昔の作品ですが、いま観ても全く古さを感じさせない良作だと思うのです。アメリカはワシントン州シアトルに住む、6人の若者たちを描いたストーリーです。
当時のアメリカ音楽界は、グランジ・ロック・ブームの真っただ中。ニルヴァーナを筆頭に、パール・ジャム、サウンド・ガーデンなど、80年代に流行した能天気な明るいダンス・ミュージックとは正反対の、退廃的なロック・ムーブメントが若者の心を虜にしていました。
そんな状況の中、ストーリーの主人公は、とあるアパートの住人たち。売れないミュージシャン、ウェイトレス、エリート会社員、キャリアウーマンなど、職業も生き方も全く異なる若者たちを中心にして描かれます。
全員が20代半ばで独身。運命の相手は欲しいけれど、結婚なんてまだまだ考えられないというこの世代。時代的には、パソコンはあっても、携帯やスマホで気軽に連絡をとるなどという手段もないという、いまから思えば想像もつかない不便さです。
それでも彼らを見ていると、現代の若者よりは、まだ自由度ののりしろがあったようにも見えるから不思議です。若者の1人、スティーヴは、失恋で男性恐怖症になっているリンダと出会い、真剣交際に発展します。
しかし2人とも、先に進む恐れと二度と失敗したくない不安で、何度も行き違いを経験します。ウェイトレスのジャネットは、遊び人のミュージシャン、クリフに愛されたいがために豊胸手術まで考えます。
でも医者の「そのままの君でいるべきだ」という言葉に背中を押され、本来の自分を取り戻すのです。遊びの恋も余裕で楽しめる大人の女性デビーは、出会い系ツールで相手を探しまくるのですが、結局、偶然の出会いから本当の恋と巡り会います。
感想
どちらかといえばコメディ映画に近いので、どの若者のエピソードもユーモアたっぷりに描かれています。しかしそこにも涙があり、迷いがあり、後悔があります。全員がゴールに到着してハッピーエンド、ではなく、逆にこれから各自の新しいストーリーが始まるという雰囲気のまま、映画は幕を下ろします。
出演は、当時大人気だったヤングスター達です。マット・ディロン、ブリジット・フォンダ、キャンベル・スコットなど、現在は40代以上になりまだまだ活躍中の彼らですが、ここでは若さゆえに悩むフレッシュな世代をのびのびと演じています。
また、劇中にかかるグランジ・ロックの数々がとにかくカッコいいのです。これだけでも当時の空気間がびんびんに伝わってきます。クリフのバンド仲間役に、パール・ジャムのメンバーが出演していることも、当時は大きな話題となっていました。
時代は変わっても、若者の悩みや成長は普遍的なテーマだと思います。世代を超えて感動できる青春映画は数多くありますが、この「シングルス」は、今の若い人たちにも大いに共感できる作品だと感じます。